ストーリーが伝わる水中写真の作り方|水中撮影|Step10

ストーリーを感じさせる水中写真とは、被写体がただ写っているだけでなく、動き、視線、環境との関係が伝わる写真です。魚が泳ぐ方向、エビが隠れる場所、ダイバーとの距離などを入れると、見る人がその場面を想像しやすくなります。この記事では、TGカメラで記録写真から一歩進んだ水中写真を作るための観察と構図について解説します。
泳ぐ、隠れる、食べる、向き合う、近づく。小さな動きの中に、その場でしか撮れない瞬間があります。
私も撮影中は、被写体が「何をしているのか」を観察するようにしています。これは陸上で野生動物を撮っているときからの習慣ですが、行動が分かる写真は、あとで見返したときにも、その一枚を撮影した瞬間を思い出しやすくするためでもあります。(肉眼で見た一瞬をより深く写真に結びつけて、貴重な感動を記憶として残すためでもあります)

カクレクマノミ/TG-6にて撮影
1.生き物の行動を観察する
ストーリーのある写真を撮るには、先に生き物の行動を観察することから始まります。見つけた瞬間にすぐシャッターを押すのではなく、少しだけ動きを見ると、写真にしやすい場面や残したいストーリー性が見えてくる事があります。(地上で10年以上撮影してきた感覚的な話も混ざるので、経験の積み重ねも重要かと思います)
水中の生き物は、それぞれに行動のくせがあります。魚が同じ場所を行き来していたり、エビが岩陰から出たり入ったりしていたり、クリーニングステーションに帰ってきたり…。そうした動きを見ていると、次にどこへ向かうのか、いつ、どの角度で顔が見えるのかを予想しやすくなります。
観察する事で、次のその瞬間が来るまでに、自分の中性浮力を整え、被写体を驚かせない距離から見守ることが、よい一枚への一歩になります。

2.何かが起こりそうな瞬間を待つ
ストーリーを感じる写真には、何かが起こりそうな前ぶれを感じる事も大切です。生き物が顔を出しそうな瞬間、魚が向きを変える直前、相手に近づく直前などです。
水中では、決定的な瞬間を狙って常に追いかけるより、起こりそうな場所で待つほうが撮りやすいことがあります。特に小さな魚や甲殻類は、急に近づくと隠れてしまいます。(たまにサービス精神旺盛な子もいますが笑)
まだその瞬間は来ないかなという時に、距離や背景、光の入り方をまとめて確認しておくと、その瞬間が来たときに失敗しない設定で撮影する事ができます。この小さな準備が、シャッターチャンスの歩留まりを上げてくれます。

3.主役と相手の関係を一枚に入れる
ストーリーを強く見せたいとき、主役だけでなく相手との関係を一枚に入れる方法もあります。魚と魚、魚とダイバー、生き物が住んでいる場所など、関係性が見えると写真の意味や、撮った意図が伝わりやすくなります。
たとえば小さな魚がサンゴの間に隠れている場面では、魚だけを大きく撮るより、サンゴも少し入れることで「どこにいるのか」が分かります。クリーニング中の魚や、向かい合う生き物を撮るときは、両方の距離感を残すと場面が伝わります。私が千葉の伊戸でサメの群れを撮ったときも、サメ単体のアップより、ダイバーと向き合う距離感を残した一枚のほうが、その場の空気を伝えられる一枚に仕上がりました。
関係性を写すときは、主役を小さくしすぎないことで、写真の失敗は減らせます。環境や相手を入れながらも、何を見せたいのかが分かる大きさを保ちます。水中では透明度の影響もあるため、必要以上に離れず、近い距離から少し広く撮る意識がポイントになるかと思います。

4.連射も活用する
動きのある場面では、連射も活用すると撮影の成功率が格段に上がります。水中では自分も被写体も動くため、狙った一瞬だけを一枚で決めるのは至難の業です。
魚が向きを変える、口を開ける、相手に近づく、光が当たる。こうした短い瞬間は、連射で数枚残しておくと、あとから表情や位置のよい一枚を選びやすくなります。
ただし、連射に頼りすぎると、構図や背景を見ないまま枚数だけが増えてしまいます。最初は観察して、起こりそうなタイミングを予想し、その場面で短く連射するのが使いやすい方法です。

5.一枚で伝わる場面を選ぶ
ストーリーを感じさせる写真では、一枚で伝わる場面を選ぶことがポイントです。撮った本人には経過・状況が分かっていても、見る人にはその前後が見えません。だからこそ、写真の中に、それらが伝わる要素を入れる必要があります。
主役の表情、向き、相手との距離、背景、光の当たり方。これらがそろうと、一枚の写真から「何をしているのか」「どんな場所なのか」が伝わりやすくなります。逆に、主役だけが小さく写っていたり、背景情報が散らかっていたりすると、何の一枚なのかが分かりにくくなってしまいます。
撮影したあとに見返すときは、きれいに撮れているかだけでなく、何が伝わるかを基準に選ぶのも大切です。多少のブレがあったとしても、行動や関係が分かる写真のほうが印象に残ることもあります。

6.まとめ
ストーリーを感じる写真は、珍しい被写体を写すだけではなく、動きや関係性も伝わる写真なのか、がポイントになってくるかと思います。写真として構図・背景を整理しつつも、残すべきものは写真に入れる事で、見る人が状況を想像しやすくなります。
私がこういう写真を狙うときは、シャッターを急がず、少し先の動きを待ちます。すぐ撮るより、被写体がどちらを向くか、どこに進むかを見てから構えるほうが、自然な場面に出会いやすく、より決定的な一枚を狙えるからです。
次に潜るときは、1枚だけ「何をしている場面か」が分かる写真をぜひ狙ってみてください!記録写真から一歩先に進む感覚がつかめると、水中写真がぐっと楽しくなるはずです!









