背景整理で主役を引き立てる撮り方|水中撮影|Step5

背景整理とは、主役の後ろに入る岩、砂地、サンゴ、青い海、ほかのダイバーなどを確認して、写真を見やすくすることです。水中では被写体だけを見ていると、背景がごちゃついたり白い砂が目立ったりして、主役が目立たなくなることがあります。この記事では、水中撮影で主役を引き立てるための背景の選び方と、撮る前の確認ポイントを解説します。
私が水中撮影に出会う前、20代で47都道府県を撮り歩きました。地上での撮影においても背景整理の考え方は大切で、何度も撮影を重ねるうちに「主役の後ろに何を入れるか」を優先的に考える癖(感覚)が身につきました。水中でも背景は重要で、整うだけで写真の伝わり方はかなり変わってくるのを実体験から学んでいます。
TGカメラは小さな被写体にも近づきやすいカメラなので、マクロ撮影からワイド撮影まで、背景を少し整えるだけで主役の印象がぐっと変わる一枚を撮影できるようになります。

雲見/TG-6にて撮影
1.背景はシンプルに
主役を目立たせたいときは、背景をシンプルにすることが基本です。背景に被写体よりも目立つ色や凹凸など余計な情報が多すぎると、見る人の視線が主役の被写体から外れてしまいます。
水中では、岩肌やサンゴの枝、砂の模様などが細かく写り込みやすいため、最初は主役の後ろに何があるかを確認してから構えると、写真の背景が整理されて主役の被写体が見やすくなります。
たとえば小さな魚やウミウシを撮る場合、背景に暗い岩の影や広い砂地を入れる(対比を作る)だけで、主役が浮かび上がることがあります。設定を大きく変える前に、少し角度を変えて背景を単純にできないか試すのが効果的です。(以前紹介したライティング技術を入れるとより、被写体を目立たせることができます)

2.青抜きで爽やかに
水中写真らしい爽やかさを出したいときは、青抜きが有効です。青抜きとは、被写体の背景に海の青を入れて、すっきり見せる撮り方です。
TGカメラで魚やサンゴの一部を撮るとき、少し下から見上げるようにすると、背景に青い水が入りやすくなります。岩やサンゴの細かい模様(余計な情報)が背景に入らないため、主役が分かりやすくなり、写真全体もシンプルで整った印象になります。
太陽光が入る場所では、背景の青が明るくなり、水中らしい奥行きも表現できます。私も宮古島や慶良間のような透明度の高い海に行くと、南国らしい青抜きを試したくなります。同じ撮り方でも、海の青さが写真の印象を決めてくれる感覚があります。ただし、無理に下からあおると姿勢が崩れたり、サンゴに近づきすぎたりすることがあります。中性浮力を保ちながら、無理のない角度で背景整理を意識することが大切です。

3.砂地でふんわり優しくみせる
砂地を背景にすると、写真をふんわり優しい印象にしやすくなります。白っぽい砂や明るい砂地は、主役をやわらかく見せたいときに向いています。
ハゼや小さな生き物を撮るときは、背景を大きくぼかすような気持ちで近づいて構える(=接写する)と、余計な情報が少なくなります。TGカメラでは一眼カメラのような大きなボケを作るのは難しいですが、被写体が許す限り近づき、背景までの距離を取ることで、やわらかい雰囲気を出しやすくなります。この時、背景は砂地(できれば明るい方がなおよし)を採用し、明るめのライティングを意識すると、より優しい雰囲気の一枚に仕上がります。
※生物を砂地に移動してください、という意図ではありません。
砂地では慣れないうちはフィンワークに注意が必要です。近づくときに砂を巻き上げると、浮遊物が増えて写真が白っぽく濁ります。撮影前に呼吸と浮力を整え、砂に触れない距離を保つことで、背景のやさしさを活かしやすくなります。

4.岩やサンゴで環境感を出す
主役だけでなく、その生き物がいる場所の雰囲気を見せたいときは、岩やサンゴを背景に入れると環境感が出ます。水中写真では、背景をシンプルに整理することだけが正解ではありません。
具体的にはサンゴの間にいる魚を撮るとき、少し引いて周囲のサンゴを少し入れると、どんな場所で暮らしているのかが伝わります。岩場にいるエビやカニなら、岩の質感を背景に残すことで、環境が伝わる自然な雰囲気になります。
大切なのは、背景を入れすぎないことです。環境を見せたい場合でも、主役より背景が目立つと写真の意図が弱くなってしまいます。TGカメラで撮るときは、主役の周りに少し余白を作り、背景の要素を整理しながら構図を決めます。旅先の海らしさ、その生みの雰囲気を残したいときにも、この考え方は必要です。

5.少し動いて背景を選んでみる
背景を整えるいちばん簡単な方法は、自分が少し動くことです。同じ被写体でも、数十センチ横に移動したり、少し低い位置から構えたりするだけで、背景は大きく変わります。(マクロ撮影では数センチだけでも背景は大きく変わります)
水中では、被写体を見つけた瞬間にその場で撮りたくなります。ただ、すぐにシャッターを押す前に、右から撮るか、左から撮るか、少し上からか下からかを確認すると、主役が目立つ背景を選びやすくなります。
もちろん、動くときは安全と環境への配慮が優先です。流れがある場所やサンゴが近い場所では、無理に回り込まないほうがよい場面もあります。中性浮力を保ち、フィン先の位置、周囲のダイバーの位置を確認しながら、少しだけ動いて背景を選ぶ。その小さな工夫の積み重ねが、水中撮影の次の一枚に繋がります。

6.まとめ
背景を整理すると、主役が何なのかが伝わりやすくなります。水中では岩、砂、泡、ほかのダイバーなどが入るため、被写体だけを見て撮った場合は、情報が多くなりがちです。
私が撮影中によく確認するのは、主役の後ろが暗いのか、青く抜けているのか、白い砂地なのかという点です。同じ生き物でも、背景が変わるだけで記録写真にも作品寄りの写真にもなります。
次に潜るときは、シャッターを押す前に一度だけ背景を見る習慣を作ってみてください。背景をほんの少し変えるだけで、写真が整う場面が多いことに気付けるはずです。









